雑記

「キネマの神様」の感想。心温まる映画だが、沢田研二の眼の奥は怖い

先日のお盆休みに、現在公開中の映画「キネマの神様」を観てきた。

本作品の監督は山田洋二。元々は志村けんが主演の予定だった映画といえば、「あー、はいはい、アレね」とお分かりになる方も多いはず。

もう1年以上前の話になってしまうのか。志村けんがコロナで死んでしまった。志村けんがコロナにかかり重症というニュースを知った時はとても驚いたが、きっとその内、回復して復帰するものだと思っていた。

まさか亡くなるとは思わなかった。

あの日、たぶん、身内の死と同じくらいのショックを日本国民全員が受けたのだろうな…。

というわけで、志村けん追悼の意も込めて、「キネマの神様」の感想を書く。

ネタバレあり!

ニューシネマパラダイスが好きな人は観るべき

「キネマの神様」は「ニューシネマパラダイス」のオマージュとなっている。

1本のキネマを通じて現在と過去が行ったり来たりする2重構想だ。

「過去のこの人物が現在のあの人だったのか!」みたいな手法も、まさにニューシネマパラダイスだ。

大まかなストーリーは…

主演の沢田研二はギャンブル好きで借金まみれで尚且つアルコール中毒のクソ爺。度重なる借金で家族にも散々迷惑をかけ、娘からも縁を切られそうになるほど。

沢田研二は青年時代、映画監督を目指す将来有望な才能のある若者であった(青年時代に映画監督を目指して奮闘する過去のシーンでは、菅田将暉が過去の沢田研二の役をしている)。

結局、映画監督の夢はあきらめてしまうのだが、その頃に書いた脚本をたまたま孫が発見する。自閉症気味の孫は若かりし頃の沢田研二が書いた脚本を読み感動する。

その脚本を現代風にアレンジし脚本の賞に応募する。大賞を取れば賞金が100万円なので借金まみれの沢田研二も頑張ることに。

結果大賞を取る。しかし、倒れ、亡くなってしまう。

コミカルな演技をしても沢田研二が怖い

主人公の役は、本来であれば、どうしようもない爺だけどなんか憎めないキャラクターとして描かれている。しかし、沢田研二は憎めてしまうのだ。「本当にどうしようもない奴だな」と沢田研二を侮蔑し、家族側に同情してしまうのだ。

これがもし志村けんが演じていれば憎めないキャラクターとしてきっと成立していただろう。

主人公のコミカルな演技も随所に散りばめられているのだが、笑えないのだ。

なぜかというと、沢田研二という人間の根っこの部分にある鋭利な刃物のような怖さが見え隠れしているからだ。沢田研二という人が持っている隠しきれないヤクザな部分が露呈している。

これは、沢田研二の魅力でもある反面、今回のような役柄では、孤高な存在感が邪魔をしているように感じた。

だから、愛嬌のあるコミカルな演技をしたところで、どこかしら怖いのだ。

沢田研二のコミカルな芝居のシーンが流れる度に、志村けんが演じていたらここで劇場に笑いが起こっていただろうなとかこのシーンは志村けんの顔芸がハマるな等と考えてしまう自分がいた。

明らかに別人

沢田研二の青年時代が菅田将暉

なのだが、菅田将暉と沢田研二が全くの別人すぎるのだ。
時は流れ随分年老いたけれども、この二人は同一人物ですよという演出が皆無だ。

同じ仕草をするとか、喋り方を似せるとか、歩き方が同じとか、そういうのが全くない。

やはり、現在と過去で同じ登場人物が登場させる場合はどちらかを無名な俳優にすべきだ。そうすれば、無名な役者に対して見る側は投影しやすい。

しかし、「キネマの神様」は菅田将暉と沢田研二である。

もうキャラクターの濃い二人である。ただでさえ別人として認識しているうえに、脚本上でも似させようとする描写がない。

ちょっとこれでは、感情移入が難しい。この映画では何度も現在と過去が行ったり来たりするが、現在に戻る度に「もうちょっとどうにかならないものか…ってか沢田研二の顔でかすぎるだろ」と違和感を覚えた。

というわけで、「キネマの神様」の感想でした。監督が山田洋二ということで、古臭さはあるものの、良質な映画でした。沢田研二の隠しきれない狂気な部分が個人的には見どころです。

追記

そういえば、昔、岡村ちゃん、マイスペースでジュリーの「晴れのちBLUE BOY」カバーしてたなぁ

POSTED COMMENT

  1. 777 より:

    志村さんが亡くなって1年以上…早いものですね。映画の主演を沢田さんが代役をされると話題になっていましたが、すっかり忘れていてこの記事で思いだしました。昔の沢田さんは鋭い目付きや精悍な顔つきから色気が溢れていて素敵でした。今は筒井康隆みたいになってますが、時折やけに艶やかな表情を覗かせて、特に鋭い目付きは昔のままで「怖さ」というのは分かる気がします。そして沢田さんは歌声がほとんど昔から変わりませんね。

    • yuji より:

      この記事を書くにあたって、沢田研二さんの映像をたくさん見たのですが、最も印象的だったのは近年のコンサート(しかもドームで)の歌声でした。
      歌声が変わらない、歌い方も変えない、アレンジも変えない、昔のままというのは、ファンにとっては嬉しいでしょうね。
      たまにちょっとした問題を起こす沢田さんですが、それも含めて凄い人だと思います。

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