岡村靖幸

「成功と挫折」は岡村靖幸の赤裸々な本音が隠れている

本屋の小説のコーナー。新潮文庫の外国文学の棚に置いてある重厚なタイトルの本たち。

  • ドストエフスキー「罪と罰」
  • ヘミングウェイ「老人と海」
  • トルストイ「戦争と平和」
  • オカムヤスユキー「成功と挫折」
  • スタンダール「赤と黒」

と、こんな感じで紛れていても、見分けがつかない程の文学的なタイトルの「成功と挫折」は岡村靖幸8枚目のオリジナルアルバムのオープニングナンバーだ。

初めてこのタイトルを見たとき、少しドキッとした。そりゃ、誰の人生にだって成功もあれば挫折もある。

しかし、岡村靖幸という人物が「成功と挫折」というタイトルを銘打つ時、我々が思い浮かべることは、明確に一つしかないからだ。

成功とは、若くしてエピックレコードという超メジャーレーベルからデビューし、華々しく活躍をしたこと。

挫折とは、過去に3度覚せい剤で逮捕され、どん底まで落ちたこと…。

もちろん、人によって受け取り方は様々だ。覚せい剤のことなんかじゃなくて、いまだに結婚できていないことが挫折なんだとか、好きな女性が出来ても自分からは告白できないことに挫折を感じている、とか。

岡村靖幸にとっての「挫折」が何なのか、一概に決めつけることはできないが、僕は「成功と挫折」という曲を聴いてまず思ったのは

岡村ちゃん大丈夫?…赤裸々だなぁ

だった。

まず歌いだしの歌詞が

現実がつらいよ あんなにしたいと思わせぶりなキスをして

「成功と挫折」はアルバムの記念すべきオープニングナンバーである。

一曲目の出だしの歌詞が「現実がつらいよ」ってなかなかインパクトがある。

次が

天国はつらいよ なんでもない広い平原があるだけ

一般的に天国とは極楽で幸せで悲しみや苦痛とは無縁の理想郷とされている。多くの宗教では「天国に行くために現世で善行を積むべし」的な考えのもとみんな頑張っているわけでしょ。

でも天国はつらいぞ、と。

たいしたことない広い平原があるだけだ、と。

つまりは、天国はつまんねーぞ、と。

天国はつまんなくてつらい。

でも、現実もつらい。

なかなか厳しい状況です。

でこの後の歌詞が

戦慄のシナリオも環境しだいとニュースではやっている
権利と美徳を分け合いたいと思えればいいのに

「戦慄のシナリオ」の後に「ニュース」というワードが来るのでこれはきっと、「犯罪」についてだろう。傷害事件や殺人事件や薬物事件など、このような犯罪を犯してしまうのは結局は環境次第なのだ、と。

このような事件を少しでも減らすために岡村靖幸は

権利と美徳を分け合いたいと思えればいいのに

という。

権利と美徳を分け合えばいいのに

でななく

分け合いたいと思えればいいのに

ここが興味深い。

あくまでも当事者目線なのだ。当事者が自分で気づかないと意味がない。故に「思えればいいのに」となる。

あり金もハリガネも花びらも触り方しだいさ
溶け合えば話せるさありったけの素直な誠実さで

自分の行い次第で世界は変わる。「素直な誠実さ」を持ってすれば誰とだって心を通じ合わせることが出来るさ。少し「キレイゴト」感を感じてしまうのは僕の心が汚れているのだろう。

「素直な誠実さ」という言葉選びが岡村靖幸らしい。

サビの歌詞が

精神科に問うても スパイラルしたくても
エンジンかけ乗っても 欠陥品のようさBABY

天使みたいに飛んでも スカイダイビングしたくても
越境した燕もどこ帰るんだ

まず「精神科に問うても」は強烈な歌詞。「精神科」というワードが出てくる歌詞ってなかなかない。

岡村靖幸は薬物依存から抜け出すための治療として、過去に(もしかしたら現在も)精神科に通っているだろうし、裁判の法廷に精神科医の名越康文さんが証人として出廷したことも記憶に新しい。

精神科に問うても→欠陥品のようさBABY

ということは、精神科のカウンセリングなんて意味がないぜ、ということなのだろうか?

スパイラルしたくても
スカイダイビングしたくても

これは、少々意味深な気がする。

一般的にスパイラルってあまり良い言葉として使われない。「負のスパイラス」みたいな。悪いことが連鎖していく時に使われる。

スカイダイビングというのも、不穏な感じがする。

だって、岡村ちゃんってスカイダイビングとかバンジージャンプとか絶対好きなタイプじゃないでしょ。いや、まぁ、実際のところはわからないが…。

となると、これは何かのメタファーなのではと考えたとき、やはり第一に思い浮かぶのが薬物だ。

薬物キメて エンジンかけても 欠陥品のようさBABY

こうなってくると

天使みたいに飛んでも

という歌詞も「天使」「飛ぶ」というワードがどうしても違法薬物を連想させる。

いやいや、考えすぎでしょ、と思われてそうだが、

過去に3度覚せい剤で逮捕された岡村靖幸が「成功と挫折」というタイトルの曲で

上記のような歌詞を書けば、そりゃ連想するだろう。

そして最後の歌詞が

越境したツバメもどこ帰るんだ

遠く見知らぬ土地まで越境したツバメ。君は一体どこに帰るんだ?

そんな想いを巡らす岡村靖幸は、越境したツバメと自分自身を重ね合わせているのかもしれない。

現在の岡村靖幸に帰る場所はあるのだろうか?

POSTED COMMENT

  1. 777 より:

    センシティブな歌詞と相反したファンキーな曲でずっと聴いていられるような気持ち良さがありますね。
    近年はこういうラインの曲が多いですが、岡村さんのボーカルは一つの音として楽器の音色と一体化しているように感じます。

    • yuji より:

      センシティブな歌詞過ぎて曲調について何も書いていないことに777さんのコメントを読んで気づきました。
      アルバムでファンキー、シングルでポップという感じですね。

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